あがり浜のベンチ

あがり浜のベンチ

「ありがとうを伝えようね。」

ブーゲンビレア

渡名喜島で出逢ったおばあちゃんは、こんな言葉をくれた。

「おかあさんおとうさんに、ちゃーんとありがとう伝えようねぇ。」

たった2分前に出逢ったばかりなのに、すべてを見透かされたようでわたしはドキっとした。

大切なことを気づかせてくれた、島のおばぁちゃんとの物語。

おばぁちゃんとの出逢い

あがり浜

『あら~?見ない顔ねぇ。観光のひと?それともお仕事?』

と、あがり浜のベンチに座っていたおばぁちゃんに声をかけられた。

あがり浜とは、沖縄県 渡名喜島の東側に位置するうつくしいビーチで、泳いでいるとウミガメに出逢うこともある。

ビーチのそばにベンチがいくつか置かれていて、砂浜まで降りなくとも、そこでぼんやりしているだけでも幸せな気持ちになる。

このときわたしはひとりで散歩をしていて、このおばぁちゃんの後ろを通り過ぎようとしているところだった。

「近い人だからって、後回しにしちゃダメだよ。」

フクギの親子

「わ!すみません!観光しに茨城県から来ました!」

おばぁちゃんが急に振り向いたので驚きつつ、わたしはそう答えた。

『そんな遠くからこんなところによく来たねぇ。おうちの人、心配してるでしょ。』

「渡名喜島が好きで、また来ちゃいました。両親はあきれていますね。」

そんなやりとりが続いたあとに、おばぁちゃんはこう言った。

『おかあさんおとうさんに、ちゃーんとありがとう伝えようねぇ。ダメだよ~、近い人だからって後回しにしちゃ~。』

図星をつかれ、わたしは言葉が出なかった。

『あんた、携帯持ってるんでしょ?いつもありがとうって連絡してみたらいいさ~。』

おばぁちゃんはそう言って微笑むと、くるっと向きを変え、ふたたび海を見つめていた。

わたしはおばぁちゃんの背中に向かって「ありがとうございました!」と言い、宿に戻ってから電話をかけた。

そういえば、前にもある人と『ありがとうは言えるうちに言っておこうね』と約束したこともあったな~。そんなことも思い出した。

また、会えますように。

また会いたい島の人

また会えるかな?お礼が言いたいな!明日フェリーで島を離れる前に、もう1回あそこに行ってみよう!と思っていたのだが、翌日はあいにくの雨だった。

おばぁちゃん、ありがとう。

またいつか、会えますように。